検証メモ・第2版
200日移動平均乖離率理論——何を検証し、何が分かったか
「下位10%まで乖離した銘柄を買う」「上位10%に居座った銘柄は避ける」という2つの仮説を、日本株TOPIX500相当500銘柄・2012〜2024年の12年分データで検証しました。判定だけでなく、根拠になった数字をこのページで開示します。
仮説1(下位10%滞在後の買い): 条件付き採用。仮説2(上位10%滞在は新規買いの回避フィルターになるか): 棄却(避ける理由にはならない)。
実運用ルール(検証メモ第2版の条件付き採用範囲)
- 乖離率実績500営業日以上の自分自身の分布で下位8〜10%を3〜5営業日連続で下回った後、翌営業日の始値で現物買いを仮定する。
- 日経平均が「価格は200日線の上・200日線の傾きは下」の上昇相場末期では見送る。日経平均自身の乖離が過去分布の下位25%以内にある弱気局面を優先する。
- 保有は20〜60営業日を目安とし、120営業日超を戦略の前提にしない。
- 乖離が深いほど期待値と含み損リスクの両方が増えるため、ポジションサイズで調整する。
- 上位10%滞在だけでは新規買いを避けない。仮説2は棄却し、中立に扱う。
サイトのライブ観測は、実運用範囲内の採用値として下位10%を使います。個別悪材料を確認する4つの追加フィルターは、このPDF本体とは別の研究機能であり、元の成績を再検証済みという意味ではありません。
検証の枠組み
各日の分位点しきい値は、その日より前のデータだけから計算しています(先読みゼロ)。エントリーはシグナル確定翌営業日の始値、保有20/60/120営業日で固定。信頼区間は単純なブートストラップではなく、21営業日を1ブロックとした日付ブロック・ブートストラップを使っています。市場暴落時は多くの銘柄が同時に動くため、トレード件数をそのまま独立サンプルとして扱うと自信過剰になるからです。
検証中に、株式分割の記録があっても実際の価格ジャンプを伴わない場合に誤って二重調整していた不具合と、倒産・上場廃止後の証券コード再利用で無関係な価格系列が接合されていた不具合の、2件のデータ品質問題を発見・修正した上で検証しています。
買うタイミング:深く乖離した銘柄ほど良いが、リスクも比例して増える
「下位10%シグナル」の中でも、実際の乖離の深さで5分位に分けると、保有120営業日で最も深い群(平均乖離-28%)は中央値+13.40%・勝率67.9%——閾値ギリギリの群(+3.10%・58.0%)の4倍以上の成績になります。ブロックブートストラップCIでも、最も深い群の下限(+12.9%)は最も浅い群の上限(+8.4%)を上回り、統計的にも明確に区別できます。ただし平均MAE(保有中の最大含み損)も最も深く(-15.9%)、期待値もリスクも同時に増えるという意味であり、無料の性能改善ではありません。
売るタイミング:典型的なトレードの追加優位性は、統計的には確認できない
保有400営業日まで日次リターンを追跡したところ、平均の指数超過収益は保有を伸ばすほど拡大し続けます(95%CIも一貫してゼロより上)。しかし中央値の指数超過収益は、保有20営業日から400営業日まで、どの区切りで見てもCIがゼロを跨ぎます。つまり平均の伸びは少数の大きな値動きに依存しており、「典型的な1回のトレードに戦略固有の優位性がある」とは統計的には言い切れません。保有20〜60営業日を目安とし、それ以上の長期保有を戦略の前提にはしないことを推奨します。
避けるべき局面:「上昇相場末期」だけが唯一マイナス
市場指数を「価格が200日線の上/下」×「200日線自体の傾きが上/下」の4象限に分けて調べると、「価格はまだ200日線の上だが、200日線自体の傾きが下向きに変わった局面(上昇相場末期・勢い失速)」だけが、ブロックブートストラップ95%CIで唯一マイナスの超過収益でした。逆に「価格・傾きとも素直に上向きの健全な上昇相場」は危険ではありませんが、CIがゼロを跨ぎ優位性があるとは言えません。弱気局面の中でも、指数自身の乖離率が自分の過去分布の下位25%以内まで沈んで初めて統計的にはっきりしたエッジが出ます(単なる200日線割れでは優位性は弱いままです)。
上位10%滞在を避ける必要はない
上位10%に3〜5営業日連続滞在した銘柄への買いは、無条件エントリーのベースラインより一貫して好成績でした(モメンタム継続)。最大含み損(MAE)で比較しても、無条件エントリーより悪化することもなく、リスク面での隠れたコストも見当たりませんでした。ただし、この効果は時期によって不安定(2018〜2022年は弱含み)なため、避ける理由にはならないが、積極的に買い増す根拠としても強くはない、という中立的な扱いが妥当と判断しています。
限界
ユニバースは「現在も上場していて、現在も流動性上位」の銘柄のみで構成する二重の生存者バイアスがあります。手数料・スプレッド等の取引コストは反映していません。ブロックブートストラップ上は独立サンプルとして十分な水準(条件により81〜99ブロック)でも、真に独立した「暴落→回復」のマクロサイクル数で言えば12年間で4〜6個程度にとどまります。市場全体が堅調な中で個別株だけが下位10%に沈むケースは、その銘柄固有の悪材料を織り込んでいる可能性があり、機械的なシグナルだけでは区別できません。
このページは検証中の統計的観測情報の公開を目的としており、特定銘柄の売買推奨や投資助言ではありません。タブに表示される個別銘柄アラートも、過去データでの傾向を機械的に抽出したものであり、投資判断は自己責任で行ってください。
